ブラジルでコロナ感染者数が急増した理由

ボウソナーロ大統領の「それで?」発言を揶揄したパロデイ画像 医療・健康

ブラジルのコロナ感染者は急増、

ついにスペインやイタリアを上回り、

感染者数世界第4位になってしまいました。

感染者数 233,511 人

死亡者数 15,662 人

(5月16日現在)

ブラジル感染者数の各州ごとの推移は以下のサイトで見ることができます。

サンパウロ州は群を抜いてトップです。

Coronavírus Brasil

なぜこのような状況になってしまったのか?

急増の背景については日本であまり報道されていないので、

ニュースや普段のブラジル生活から分かったことをまとめ、

独自に分析をしてみました。

ブラジルに住んでいない日本人の方になるべくわかりやすく説明するために、例えば、quarentena(クアレンテーナ)といったブラジルで通用している用語や固有名詞は敢えて使用しておりません。

1. コロナウィルスの脅威を楽観視

ブラジルにコロナウィルス初の感染者が判明したのは2月26日、イタリアへの出張帰りの61歳の男性でした。

  • 初の感染者が軽症で入院の必要がなかった
  • ただの軽い流行り風邪だと軽視

また、この時ブラジルはカーニバルの真っ最中。メディアの関心もコロナよりもカーニバルに向いていました。しかしながら、このカーニバル休暇は毎年連休なので、海外旅行へでかける人も多く、海外旅行からブラジルに帰国した人からも多く感染者が出た可能性が高いです。ブラジルは多民族国家。ヨーロッパからの移民も多く、例えば、イタリアやスペインの永住権を持っているブラジル人も結構多いのです。永住権更新のために、ヨーロッパへ渡航する人もいます。当初は「海外渡航ができる富裕者層しかコロナにかからない」と思われていましたが、海外渡航の経歴がない人からも感染者が出始めたことから、政府は緊急事態宣言を発しました。

2.マスクやうがいの習慣がほとんどなかった

5月7日より、外出時のマスク着用が法律で「義務」となりました。今は着用しないとスーパーに入店もできないので、着用率は100%となりましたが、それまでは「奨励」だったので、スーパーでもマスクをしている人は5割もいないほどでした。ブラジルではかねてより、マスクを着用する習慣があまりありませんでした。

コロナが流行り始めたころ、手洗い、アルコールスプレーの活用法などの情報は多く出回りましたが、そういえば、「うがい」に関しては全く啓発動画のようなものも出回りませんでした。

「うがい」はポルトガル語でgargarejoといいますが、この単語、ブラジルでコロナが流行し始めてから一度も聞いたことがありません。

3.不足品購入や助成金の受け取りに長蛇の列

コロナが流行し始めたと同時に、コロナウィルスはアルコールジェルが有効的、という情報が瞬く間に拡散されました。するとアルコールジェルが不足し始め、アルコールジェルを再入荷した店に人々が行列をなすようになりました。この写真は3月20日ごろ、インダイアツーバのお店でその現象が起きたときのものです。

コロナウィルスの拡散、感染を防ぐのは「3密」を避けることのはずが、まさに本末転倒の行動をしている人が多かったのです。もちろん、この時はまだほとんどの人がマスクをしていません。今は様々な企業がアルコールジェルの生産に乗り出したおかげで、どこでもアルコールジェルを買うことができるようになりましたが。。。どこかの国でパチンコ店が開店したと同時に行列をなすのと同じですね。また、政府で非正規労働者を対象に600レアルの助成金を支払うことが可決されたのですが、ブラジル国民の3分の1が預金口座を持っていないため、助成金受け取りのための長蛇の列ができる、ということも起こりました。

4.中途半端な外出自粛令

政府が外出自粛令を出したのが3月23日でした。これにより、学校は休校、仕事も在宅、スーパー、病院、薬局以外の商店は閉店、飲食店はデリバリーサービスのみ、となりました。「外出自粛令」もそこまでの強制力もなく、マスクの着用も義務ではなかったために、短期間でコロナウィルス拡散の封じ込めに失敗した原因だと私は考えています。そのため、3月から5月末までズルズルと自粛令が延長になっています。また、ブラジルは連邦制国家であるゆえ、対策も州政府や自治政府が独自の判断で対策をしています。ロックダウン(都市封鎖)をするかしないかは自治体によって判断されています。つまりロックダウンをしている市とそうでない市があるということです。他国で次第に感染者数が減ってきているのに対し、ブラジルは悪化の一途を辿っています。

5. だから外出しちゃう。我慢できない。

ブラジルに住み始めた時に、骨折して松葉杖を突いている多くの人が、ショッピングや外へ出歩いいるのに驚いたことがあります。しかも、金属埋め込みレベルの骨折具合いの人が。ブラジルに長く住んでいる友人が「怪我していようが、ブラジル人は養生より外に出ないのを我慢できないんだよ~」とコメントしました。コロナが感染力が強いウィルスだと分かっていても、外へ出たい気持ちが抑えられない人が多いかもしれません。実際、インダイアツーバでも自粛が延長するかしないかのときに、居酒屋が再開して、そこお客さんが集まり、自粛を守っている人からは大ブーイングが起こりました。もちろん、距離なし、マスクなし。

ブラジル南部のクリチバ市ではひっそりとクラブを開店し、そこにお客さんが当然集まったのだとか。お店を開けば、行ってしまうのです。自粛を守る人もいれば、外出してしまう人もいる、これはブラジルだけではなく、どこの国でもそうだとは思います。オンライン飲み会は確かに寂しいよねぇ。気持ちはわかるのですが。

6.国内政治の対立ー大統領がコロナの抑制に無関心

日本のニュースでもすでに報道されていることですが、ブラジル保健相、サンパウロ州知事がいち早く外出や商業活動の規制する政策を打ち出したのに対し、ブラジルトップのボウソナロ大統領は経済活動優先させる言動をくり返し、国民と自治政府の反発を招いています。

「人は誰でもいつかは死ぬ」

「日本だってお店も閉まってないし、花見もしているだろう?」

コロナの感染死者数が5,000人を超えたことに対してのコメントは

「それで?私にどうしろというんだい?」

この「それで」発言はブラジルで大変話題になりました。

大統領を揶揄した画像。

大統領出馬演説の時に、腹部を刺され、入院したときの大統領本人の画像だと思われます。

この大統領の人命を顧みない態度に対して、州政府と保健相が対立しました。大統領は保健相と法相までもを解任、1か月前に新たな保健相が就任しましたが、つい先日、その保健相も大統領の政策とやはり対立したのか、自ら辞任をしました。今、ブラジルは内部分裂している場合ではないのですが。。。どこかの国もトップがこんなんで、地方自治の方が頑張っている気がしますが、内部分裂具合はブラジルがひどいと思います。

7.国民意識の格差

大統領の言動が国民の不信と反発を招く一方で、商店が閉鎖され続けることに反発した国民が州政府に対して、車両デモをしました。もとより不景気だったブラジル。そこにコロナの流行がやってきてしまったので、ブラジル経済はさらに大打撃を受けました。ブラジルは階級社会で、貧富の差が大きいです。今回のコロナに対する意識もその差が顕著に表れています。

これはインダイアツーバ地区ごとのコロナ感染患者数です。Morada do solという地区が突出しています。

インダイアツーバにはフェベーラはないのですが、 Morada do Solはインダイアツーバの中では庶民的な地区として知られています。次いでセントロ地区が多いのは、商店が多く、営業をしている店が多いので、普段通りに買い物へ出かけている人が多いそうです。

まだマスクが義務化されていない時に、スーパーへ行くとそれが客層でよく分かりました。高級スーパーだとお客さんのマスク着用率が多く、安いスーパーに行くとマスク着用率が少ないと感じました。底辺の届かないところに公衆衛生の知識の普及をしなければならないと思います。

8.イースター、チラデンチス、母の日

私自身はカトリック教徒でもないので、今年くらいはチョコレートの卵を誰にも渡さなくてもいいだろうと思い、自分の子どもにさえも買いませんでした。ところが、イースターを前にスーパーでチョコレートはほぼ完売、イースターと母の日の前はスーパーで人がいっぱいでした。

私は絶対にこれらのイベントを境に急増したと思っています。この状況から、サンパウロ市では車のナンバープレートの番号によって日替わりで交通規制をすることにようやく乗り出しました。イースター、チラデンチスの連休中は交通規制がなかったため、人の移動が普通にありました。ブラジル人は家族のつながりを大事にする国民です。母の日は今年はビデオ通話で我慢だね、と高齢者の自分の親にも会うのを避けている人がいる一方、「母の日くらいは」と家族で集まったのではないでしょうか。実際、私の住むコンドミニオにもいつもより車が停まっていました。長引く自粛生活で自分の家族に会えないストレスを感じている人が多いように感じます。確実にブラジル人の心を感傷的にさせています。

9.気温が下がり、乾燥した冬に突入

北半球の国々が初夏に入る一方、季節が逆の南半球のブラジルでは、秋です。サンパウロ州では先週辺りから、気温がぐっとさがりました。それに伴い、死者も急増しました。この時期は例年、気温差で風邪を引く人が増えたり、インフルエンザも時々流行ります。そして現在は雨も少なく乾燥するので、外はすぐに土ぼこりでいっぱいになっています。この時期はただでさえ、喉や気管支を痛める人が多いのです。ウィルスは乾燥している粘膜につきやすいので、今のブラジルの気候はコロナウィルスには好条件だと言えます。だからこそ、冬が終わるまでは、コロナだけでなく、風邪にも注意しなければなりません。

まとめ

ブラジルでコロナ感染者が急増した原因をまとめると

  • 経済や政治の不安定という社会的要素
  • ブラジル人が重要視するイベントと気候がまさに悪いタイミングで重なった
  • 自粛生活の「少しの間の我慢」を国民全員が徹底してできていなかった

その結果さらに自粛生活が長引いています。6月はこれからもっとぐっと気温が下がります。まさかフェスタ・ジュニーナはやりませんよね?

普段のブラジルで報道されているニュースをまとめ、私が普段ブラジル人の行動を観察した目線からコロナ感染者急増の原因を分析しました。これ以外にも原因がまだ思いつく!というご意見ございましたら、コメントを是非お寄せください。

次回の記事では我が家が実践しているブラジルでの冬の風邪予防法を紹介したいと思います。

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